パーキンソン病

パーキンソン病とは

パーキンソン病とは、徐々にからだの動きが鈍くなる病気です。

脳の中のドパミンと呼ばれる神経細胞が減少し、振戦(ふるえ)、動作緩慢(動きが小さく・鈍くなる)、筋固縮(筋肉がこわばる)、姿勢保持障害(バランスがとりにくくなり、転びやすくなる)を主な運動症状とする病気です。

パーキンソン病の患者さんは日本全国で約20万人、およそ人口700人あたりにひとりの割合です。パーキンソン病の発症年齢は50歳から60歳以降であることから、高齢の方の100人にひとりがパーキンソン病の患者さんであり、脳卒中、認知症についで頻度の高い神経の病気です。

パーキンソン病の主な症状と重症度

パーキンソン病の4大症状

パーキンソン病で代表的な運動症状は次の4つです。いずれの症状も、症状の強さに左右の差があるのが特徴です。

パーキンソン病の主な症状「振戦」

振戦
手足に何もしていないときに
ふるえが出る。
 
 

パーキンソン病の主な症状「無動・寡動」

無動・寡動
動作が鈍くなる。
起立や歩行に時間がかかる。
 
 

パーキンソン病の主な症状「筋強剛」

筋強剛
筋肉がこわばる。
細かい動作などが難しくなる。
 
 

パーキンソン病の主な症状「姿勢保持障害」

姿勢保持障害
からだのバランスがとりにくくなり、転倒しやすくなる。
病初期にはあまりみられず、進行するにつれ出現する。

4大症状以外にも、様々な症状があらわれることがあります。上に示した症状が必ずみられるわけではありません。

運動症状

  • 振戦
  • 筋強剛
  • 無動/寡動
  • 姿勢保持障害
  • 姿勢異常
  • すくみ現象
  • 構音障害
  • 小声
  • 嚥下障害
  • 流延など

非運動症状

  • 自律神経系の症状
    (便秘、排尿障害・頻尿、低血圧・起立性低血圧、発汗異常、脂漏症)
  • 睡眠障害
  • 疲労
  • 精神症状(不安・抑うつ、意欲低下、無関心、幻覚・妄想)
  • 行動障害(病的賭博、衝動制御障害)
  • 認知機能低下
  • 痛み

パーキンソン病の重症度分類(ヤール分類)

パーキンソン病の進行度をあらわすものとして、「ホーン&ヤール重症度」という分類方法があります。
重症度は症状によって5段階に分けられます。

パーキンソン病の重症度分類(ヤール分類)

※3以上から難病指定が受けられます

パーキンソン病の病因

パーキンソン病の原因は不明で、いくつかの要因が重なり中脳黒質とよばれる脳の一部にあるドパミン神経細胞が徐々に失われると、ドパミンの分泌が少なくなり、パーキンソン病を発症します。

なお家族性パーキンソン病では、発症年齢が40歳未満と若く、20以上の関連遺伝子が明らかになっています。

パーキンソン病の病因

パーキンソン病の診断方法

パーキンソン病を確実に診断できる検査法は現時点で確立していませんが、一例として下記の流れで診断します。

▼パーキンソン病の診断方法について、ご案内ください。

パーキンソン病の症状経過

パーキンソン病の症状経過

※出現する症状や病気の進行は、それぞれの患者さんで異なります。

治療の基本は薬による治療で、足りなくなっているドパミンを補充するため、L-ドパやドパミンと似た働きをする薬(ドパミン作動薬、ドパミンアゴニスト)を内服します。発症後数年は薬がよく効きます。しかし病状は徐々に進み手足の症状は両側となり、また転倒しやすくなります。

薬による治療が5年以上経つと薬の効く時間が短くなり、薬が効いて動きやすい時間帯(オン)と、薬の効果が切れて動きにくくなる時間帯(オフ)が出現するようになります(ウェアリングオフ現象)。

さらに進行すると薬の内服により、手足が勝手に動いてしまう不随意運動が生じる場合もあります(ジスキネジア)。

投薬治療によるウェアリングオフ現象とジスキネジア症状

パーキンソン病では中脳黒質という場所からのドパミン産生が少なくなることが症状の原因と考えられており、足りなくなったドパミンを補充することが治療法の基本で、レボドパもしくはドパミン作動薬/補助薬といった薬を使います。病初期は薬の効果が長く持続するため、薬の副作用(ジスキネジアなど)や薬が切れる事による症状(オフ症状:身体の動かしにくさ)を感じることはほとんどありません。

しかし、病気は時間とともに進行していくため、罹病期間が長くなると、薬の効果が切れてしまって動けない状態(オフ時間)が生じたり、ジスキネジアという体をうねうねと動かしてしまうような不随意運動が出現したりします。

そのため、徐々に内服する薬の量や回数を増やして身体の動きを調整することになりますが、そのような進行期の患者さんには脳深部刺激療法(DBS)が効果を発揮します。

DBSにはパーキンソン病自体を完治させる効果はありませんが、一日の中で動きづらくなるオフ時間を短縮し、ジスキネジアや振戦(手足のふるえ)などの内服薬が効きにくい症状を改善することで体力を維持し、健康寿命を長くします。かつて脳深部刺激療法はパーキンソン病治療の最終手段と考えられていましたが、進行期の中でも比較的早期に用いることで、治療効果を実感できる時期が長くなると考えられています。また、発症して2・3年の間もない時期であっても、薬が効きにくい振戦が主症状の場合にはこの治療の対象になります。

パーキンソン病の治療法

パーキンソン病の治療法には、L-ドパによるドパミン補充療法を中心とした薬物療法、刺激発生装置や持続注入ポンプなどの機器(デバイス)を用いるデバイス補助療法、外科療法などがあります。

薬物療法

治療の基本は薬による治療で、足りなくなっているドパミンを補充するため、L-ドパやドパミンと似た働きをする薬(ドパミン作動薬、ドパミンアゴニスト)を内服します。

外科的治療

脳深部刺激療法(DBS)

脳深部刺激療法(deep brain stimulation : DBS)とは、その名の通り脳の深い場所に電極を留置し、胸部に埋め込んだ刺激装置からケーブルを伝って微弱な電流を流すことで脳の異常な状態を調整する治療法です。

脳深部刺激療法(DBS)とは

MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)

MRガイド下集束超音波治療(MRgFUS)は治療部位に超音波を集束させることによって熱凝固する治療です。パーキンソン病の薬物治療で十分に効果が得られない振戦症状か、あるいは薬物療法で十分な効果が得られない運動症状で、脳深部刺激療法の適応が困難な患者さんに対して実施可能であり、MRgFUSで治療部位を熱凝固することで、症状緩和が期待できます。

MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)とは

パーキンソン病のよくある質問