脳深部刺激療法(DBS)とは
脳深部刺激療法(deep brain stimulation: DBS)とは脳の奥深くにある特定の領域(核といわれる部位です)に刺激電極を留置し、前胸部などに埋め込んだ刺激装置から電気パルスを送り刺激することにより不随意運動症(パーキンソン病・本態性振戦・ジストニア)を治療する方法です。

脳深部刺激療法(DBS)の主な適応疾患
脳深部刺激療法(DBS)の効果・期待できること
- ふるえやパーキンソン病による運動障害を軽減できる。
- パーキンソン病では、お薬が切れて生じる症状を改善し、1日中お薬が効いている状態に保つことができる
- お薬を飲む時間を気にすることがなくなり、活動や行動範囲が広がる
- お薬の量を減らすことができ、お薬による副作用が軽減できる
- 必要に応じて刺激の強度を調整しながら治療できる
- 体の左右に差のある症状に対して別々に調整できる

※万が一効果がなかったり副作用がコントロールできなかったりした場合、刺激を中止する(オフ)、または植込んだ機器は手術で除去することができます。
※治療効果には個人差があります。
脳深部刺激療法(DBS)のメカニズム
刺激発生装置は弱い電気信号を作り、延長ケーブルとリードを介し脳深部を刺激します。この電気信号により脳内の異常な電気活動は修正され、パーキンソン病や本態性振戦の症状を緩和することができます。
通常、電気刺激は常に脳内に送られますが、患者さんご自身がリモートコントロールで刺激のオン・オフを切り替えることができます。
刺激の強さも調整することができます。

脳深部刺激療法(DBS)の使用機器
DBSでは以下の機器を体内に植込みます。
患者さんは、専用リモートコントロールを用いて、刺激のオン(入)とオフ(切)の切り替えができます。
充電式のDBSでは充電器で定期的に充電します。

リード
脳深部に植込みます。先端にある数個の電極から微弱な電流を流します。

刺激発生装置
前胸部の皮下に植え込みます。微弱な電気信号を発生させ皮下のケーブルを介して脳に伝えます。充電式と非充電式の2つのタイプがあります。

専用リモートコントロール
医療者用コントローラーと、患者用コントローラーがあります。刺激発生装置の刺激のオンオフ、充電状態の確認、刺激条件やプログラムの変更などを行うことができます。

充電器
刺激発生装置の真上に、充電器をあてて充電を行います。数日に1回、数分から数十分の充電が必要です。
提供:日本メドトロニック/ボストンサイエンティフィック社/アボットジャパン合同会社
脳深部刺激療法(DBS)手術の流れ
ここでは手術前後の流れをご説明いたします。
1.入院・検査
手術前に必要な、さまざまな検査を行います。
入院・検査お薬の飲み方について、医師から特別な指示が出る場合があります。
2.手術
大きく5つのステップに分けられます。約4~8時間で終了します。
①フレーム装着
②画像撮影・リード植込み位置の決定
③穿頭・リードの挿入
④テスト刺激
⑤刺激発生装置の植込み
①フレーム装着
患者さんの頭部に局所麻酔をして、フレームと呼ばれる金属枠を装着します。
フレームにより頭部が固定され、刺激部位の位置決めができるようになります。

②画像撮影・リード植込み位置の決定
フレームを頭部に装着した状態でMRIやCTを撮影し、脳深部のリード植込み予定部位(ターゲット)を決定します。

③穿頭・リードの挿入
前頭部の頭皮に局所麻酔をし、約4~5cm切開します。ドリルで頭蓋骨に14mm程度の円形の穴を開けます。次にリード挿入部位を特定するために記録用の電極を脳内に挿入し、脳内の電気的な活動を記録します。記録が終了したら記録用の電極を取り出し、リードを挿入します。

④テスト刺激
リードが挿入されたら、テスト刺激を行います。
テスト刺激の目的は、リードが正しい位置に挿入され、治療効果があるか、副作用がないかどうかを確認することです。
医師の指示に従って、体の一部を動かしてみたり、質問に口頭で答えたりします。
もし効果がなかったり、副作用がコントロールできない場合は、リードを再度挿入し直して刺激部位を変えたり、手術自体を中止したりすることがあります。

⑤刺激発生装置の植込み
テスト刺激で効果と副作用について確認できたらリードを頭蓋骨に固定し傷を閉じます。次に全身麻酔下で胸に刺激発生装置を植込みます。リードと刺激発生装置は延長ケーブルでつながれます。これらは全て体内皮下に留置され、体外からは見えません。
刺激発生装置の植込み手術は、リードを挿入した日には行わず、数日後に実施する場合もあります。

3.刺激の調整(手術後1~2週間)
通常、手術後は1~2週間入院する必要があります。
入院中に医師が刺激の調整を行います。
退院後も刺激の調整や検査のために通院が必要ですので、医師の指示に従ってください。

4.手術を受けた後の通院
脳深部刺激には様々な刺激条件が存在し、患者さんごとに最適な刺激条件を調べ、設定する必要があります。しばらくは外来通院の中で最適な刺激を探す作業が必要となります。一旦刺激条件が定まればその後は頻繁な調整は不要となりますが、刺激装置のメンテナンス、バッテリー残量のチェックのための外来通院が必要です。
脳深部刺激療法(DBS)のリスク・副作用
日常生活への影響
体内に刺激電極と刺激装置が埋め込まれていますので電流や磁場に対する若干の注意が必要となります。埋め込まれた機種によりますがMRI撮影の際には刺激装置をMRI撮影用に設定し直す必要があり、MRIの撮影方法にも制限があります。MRI撮影前には必ず受診した医療機関に脳深部刺激装置が埋め込まれていることを仰ってください。他にも体に電流が流れるような医療器具など注意が必要なものがありますので、主治医へ確認するようにしましょう。



