てんかん

てんかんとは

てんかんは脳細胞の一部が異常な電気活動をおこし、それが広範囲の脳に、神経ネットワークを介して広がることで、けいれん発作やその場にそぐわない行動をとる発作が引き起こされる慢性の脳の病気です。

てんかんとは

てんかんの主な症状

てんかんの発作症状は多彩です。脳には領域によって機能が分かれているため、脳の発作の巻き込まれ方によって、発作症状は変わります。手足のけいれんや硬直が生じたり、しびれ感や、見え方などの五感の異常が生じたりします。脳のせまい範囲で発作が起きる場合には意識が保たれることがありますが、脳の広範囲に発作が生じると意識を失ってしまいます。

発作の始まる脳部位により「焦点起始発作」と「全般起始発作」の大きく二つに分けられます。また、始まりが判断できないものをは「焦点分類不能発作」と呼ばれています。

焦点起始発作

意識が保たれる発作

てんかんの主な症状(顔や手の一部がしびれたり、ガクガクしたりする)

顔や手の一部がしびれたり、
ガクガクしたりする。
 

てんかんの主な症状(顔や手足が一瞬ピクッと動く:ミオクロニー発作)

顔や手足が一瞬ピクッと動く。
(ミオクロニー発作)
 

てんかんの主な症状(頭痛や吐き気を催す。鳥肌が立つ。急に汗をかく。)

頭痛や吐き気を催す。
鳥肌が立つ。急に汗をかく。
(自立神経発作)

てんかんの主な症状(皮膚がピリピリする。輝く点や光が見える:感覚障害)

皮膚がピリピリする。
輝く点や光が見える。
(感覚発作)

意識が障害される発作

てんかんの主な症状(突然意識がなくなる。口をもぐもぐする。フラフラと歩き回る:欠伸発作)

意識がなくなり、動作が停止する。
手をごそごそ動かす。
口をもぐもぐする。
(動作停止発作/ 自動症発作)

てんかんの主な症状(屈曲する腕と、伸展する腕の姿勢で4の字に見える(figure 4 sign)

意識がなくなり、目が側方を向く。
顔ががくがく側方を向く。
その後全身を硬直させたり、がくがくとけいれんする。
(焦点起始両側強直間代発作)

全般起始発作

てんかんの主な症状(急に体の力が抜けて、崩れるように倒れる:脱力発作)

急に体の力が抜けて、崩れるように倒れる。
(脱力発作)

てんかんの主な症状(手足を伸ばした格好で全身を硬くする:強直発作)

手足を伸ばした格好で全身を硬くする。
(強直発作)

てんかんの主な症状(膝などを折り曲げ、両手足をガクガクさせる:間代発作)

膝などを折り曲げ、両手足をガクガクさせる。
(間代発作)

上記以外にも、様々な症状があらわれることがあります。また、上に示した症状が必ずみられるわけではありません。
てんかんの発作症状は多彩ですが、一人一人の患者さんには、ある決まった発作パターンが出現することが多いです。

てんかんの病因

▼原稿の提供と、必要であればイラストの依頼をお願いします。

てんかんの診断方法

▼原稿の提供と、必要であればイラストの依頼をお願いします。

てんかんの治療法

てんかんは薬で治療をするのが一般的と思われていますが、検査法や医療機器の進歩に伴い、難治性てんかんに対する外科治療が将来性のある新たな治療分野となっています。

外科的治療

通常、てんかんは薬で治療しますが、薬が効かないてんかん患者さんには、機能的脳神経外科の手法を用いたてんかん手術がおこなわれています。
てんかん手術には発作を消失させる「根治的手術」と発作の軽減を図る「緩和的手術」があります。

根治的手術(切除手術)

脳波やMRI検査等により、てんかんの原因となる脳の部位(てんかん焦点と言います)を特定した後に、開頭手術を行い、てんかん焦点を切除して発作を止めます。しかし運動、言語、視覚、知覚、記憶など重要な機能がある部位は障害がない限り切除はしません。てんかんの原因や焦点の部位にもよりますが、発作消失率は60-80%程度と良好な結果が得られています。特に海馬・偏桃体は治療効果が良いとされています。

てんかんの治療法(根治的手術:切除手術)

近年、根治手術の前に、頭蓋骨に小さな孔をいくつか開け、脳の深部に電極を10数本留置し、脳波を記録することによりてんかん焦点を特定する手法が開発され、根治的手術の精度が上がっています。

てんかんの治療法(電極を留置し、脳波を記録することでてんかん焦点を特定)

緩和的手術

てんかん焦点が脳の広い範囲に及ぶ場合や多発性の場合に用いられます。開頭手術により脳の異常な電気活動を広げるネットワークを遮断し、てんかん発作を抑える手術法です。緩和的手術では発作の消失はあまり望めませんが、約50-70%の患者さんで発作症状の軽減や回数の減少が見込まれます。危険な発作で困っておられる患者さんや、長い間多くの薬を飲んで副作用が気になる患者さんには有効な治療法です。

てんかんの治療法(緩和的手術)

体内埋込み装置による緩和的治療

近年、脳神経を電気刺激する装置を体内に埋め込み、発作を軽くしようとする治療法が開発されています。現在、国内では脳深部刺激療法(後述)や迷走神経刺激療法(後述)が行われています。(脳深部刺激療法の手技については脳深部刺激療法の項参照)。

また、脳内に埋め込んだ電極から異常な脳波活動を検知し、異常波が広がる前に脳に電気刺激を与え、てんかん発作を抑えようとする装置(反応型神経刺激装置)が開発されています。てんかんに対する反応刺激装置は近い将来日本でも使用できる可能性があります。

体内埋め込み装置による緩和的治療

脳深部刺激療法(DBS)

脳深部(視床前核というところ)に電気を流すことで、異常な神経ネットワークを遮断し、てんかん発作の頻度を減らし、発作を軽くする効果があります。2023年12月から日本でも認可がおりて治療が行われるようになりました。

てんかんに対するDBS療法は緩和的治療であるため、DBS治療のみで発作の完全抑制にいたる方は少ないです。また、治療効果はDBSを開始した直後ではなく、徐々にみられるようになります。一方でその効果は長期間持続し、DBSを長期間続けるほど発作の抑制効果(発作回数が半分以下になる、発作が軽くなる)が上がると言われています。

現在のところ、焦点てんかんに対してのみDBSが行われています。DBS手術自体の安全性はパーキンソン病や本態性振戦のDBS手術と同等で、重篤な合併症率は低いのですが、視床前核の刺激による副作用として、軽度の気分障害、記憶障害が出現する可能性があるといわれています。刺激は細かく調整できますので、副作用を抑えたDBS療法が可能です。

脳深部刺激療法(DBS)とは

迷走神経刺激療法

迷走神経刺激(vagal nerve stimulation: VNS)療法は代表的な緩和的治療法の一つであり、頸部にある迷走神経という自律神経を刺激することにより、てんかん発作の程度や頻度を軽減します。

刺激装置設置の手術では、左頚部迷走神経に刺激用電極を巻き付け、刺激装置を左前胸部に設置します。

本治療の特徴は、他のてんかんの外科治療と違い頭部の手術を行う必要がなく、低侵襲であることです。手術は全身麻酔で半日ほどで行われます。

手術後に刺激療法が開始され、退院後は定期的な外来通院が必要です。刺激の基本的なサイクルは5分間のうち30秒間刺激があり、4分30秒間休止します。刺激中は喉がいがらっぽくなったり声が低くなったりすることがありますが、普段の生活に支障がないように、ゆっくりと数ヶ月の時間をかけて刺激条件を調整します。

刺激装置はバッテリー消耗のために約5年毎に交換が必要となります。その際には再度入院して、手術が必要となりますが、初回の手術と違い、胸の刺激装置部分だけを交換しますので短時間で簡単に行えます。最近は心拍検知により発作が起こりそうな時に刺激条件を変えるような設定ができるもの、夜間睡眠中は別設定にすることができるもの、などが出てきました。心拍検知機能が追加された機械に交換することで、発作がなくなった患者さんもおられます。刺激装置の改良は続いており、これからも新しい機能に期待したいところです。

VNS療法は緩和的治療であるため、VNS治療のみで発作の完全抑制にいたる方は少ないです(5%)。しかし、約6割の方には発作の抑制効果(発作回数が半分以下になる、発作が軽くなる)を加えて、いままで副作用のためにもう1剤のお薬追加できなかった方にもVNSを実施することが可能です。

てんかん外科治療に関しては主治医の先生にお気軽に相談してください。

てんかんのよくある質問

▼参考サイトより引用。内容をご確認の上、原稿の提供をお願いします。