ふるえ(振戦)

ふるえ(振戦)とは

振戦とは筋肉が意識とは無関係に収縮と弛緩を一定のリズムで繰り返すことによって起こる体の震えのことです。

振戦は主に上肢に生じますが、頭部や声、体幹、足に生じることもあります。振戦は命に関わる病気ではありませんが、震えによって字が書けなくなったり、コップで飲み物を飲めなくなったり、日常生活に多大な影響を与えうる疾患です。

本態性振戦とは

振戦はふるえが出現する条件によって分類されます。

静止時振戦

何もしないでじっとしている時に出現するふるえ
例)パーキンソン病

動作時振戦

動作に伴い生じるふるえのことで、手などを動かしている際に生じるふるえを「運動時振戦」、一定の姿勢をとった際に生じるふるえを「姿勢時振戦」と呼びます
例)本態性振戦

振戦の病因

振戦は脳の運動機能関連領域の機能異常によって生じると考えられています。
原因疾患の一つの症状として生じる場合と、本態性振戦のように振戦そのものが疾患である場合があります。

振戦を生じる代表的な疾患

  • 本態性振戦
  • パーキンソン病類縁疾患(パーキンソン病、進行性核上性麻痺など)
  • 脳血管障害
  • 甲状腺機能亢進症
  • 緊張な不安などで生じる生理的振戦 など

本態性振戦とは

本態性振戦は、手のふるえを生じる代表的な病気です。人口の2.5~10%と報告されています。高齢者に多く見られますが、若い人でも発症することがあり、20歳代と60歳代にピークがあると言われています。また、家族に本態性振戦がある人は発症しやすいとも言われています。原因ははっきりとせず、原因がはっきりしないことを「本態性」と呼ぶため、この病名がついています。

本態性振戦の主な症状

本態性振戦の特徴は、動作時振戦です。主には手にふるえがみられますが、頭、声、腕や足にもふるえが起こる場合があります。

本態性振戦の主な症状(コップを持つ手がふるえる)

コップを持つ手がふるえる

本態性振戦の主な症状(力が抜ける、時々ふるえる)

力が抜ける、時々ふるえる

本態性振戦の主な症状(人前で話す時に声がふるえる)

人前で話す時に声がふるえる

本態性振戦の主な症状(頭や首が細かくふるえる)

頭や首が細かくふるえる

本態性振戦の診断方法

本態性振戦では、ほかの病気によるものではないことを確認する検査が行われます。

▼本態性振戦の診断方法について、ご案内ください。

本態性振戦の治療法

振戦の治療には診断が大事です。振戦の原因となる原疾患が判明すれば、原疾患の治療をしっかりと受けましょう。
例えば、甲状腺機能亢進症による振戦であれば甲状腺の治療を受けることで振戦は消失します。
また、パーキンソン病にみられる静止時振戦にはレボドパが用いられます。他に抗コリン薬が有効な場合もあります。

薬物療法

本態性振戦ではβブロッカーが使われます。βブロッカーは高血圧の薬としてよく使われる薬です。アロチノロールまたはプロプラノロールという種類のβブロッカーが有効なことがあります。他に、プリミドン、ベンゾジアゼピン誘導体が有効なこともあります。しかしながら、このような内服薬による治療で振戦が十分に改善しない場合には外科的な治療方法が考慮されます。

外科的治療

薬剤での治療が困難な振戦に対する外科治療には脳深部刺激療法、定位的視床破壊術、集束超音波視床破壊術、ガンマナイフ視床破壊術などがあります。

本態性振戦、パーキンソン病に対する脳深部刺激術や視床破壊術の効果は多くの臨床研究で確かめられています。他に手術が有効であったと報告されている振戦には多発性硬化症、外傷後振戦、起立時振戦、ホルムズ振戦などがあります。ただし、本態性振戦、パーキンソン病以外の疾患に対する手術効果は報告によるばらつきがあり注意が必要です。主治医とよく相談しましょう。

脳深部刺激療法(DBS)

脳深部刺激療法の特長は刺激調節性があること、可逆的な治療方法であることです。振戦の強さや副作用に対応し刺激パラメータを調整することができます。また治療に不満足な場合など、必要に応じて刺激装置は抜去することができます。一方、短所としては刺激装置を体内に埋め込まなければならないことです。治療を受ける際には他の治療方法とよく比較してご自身にとって最適な治療方法を選択してください。

脳深部刺激療法(DBS)とは

高周波凝固手術(RF)

高周波凝固手術は、脳の深部に電極を挿入し熱を発生させることで、標的とする構造物を熱凝固する方法です。基本的に得られる効果は脳深部刺激療法と同一です。体内に器械の埋め込みを要さずに効果を得ることができます。適応となる疾患は脳深部刺激療法と同一です。

高周波凝固手術(RF)とは

MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)

集束超音波療法とは、超音波を一か所に集めることで熱を発生させて、脳組織を熱凝固する治療法です。MRI装置の中で治療を行います。MRI撮影を行いながら超音波を照射することで、超音波を当てている場所と温度をリアルタイムでモニターしながら治療を行うことができます。皮膚切開を必要としませんが、頭髪はすべて剃毛しなければいけません。

MRガイド下集束超音波療法(MRgFUS)とは

本態性振戦のよくある質問