高周波凝固手術(RF)とは
定位的凝固術は、脳の深部に電極を挿入し熱を発生させることで、標的とする構造物を熱凝固する方法です。基本的に得られる効果は脳深部刺激療法と同一です。
通常、全身麻酔ではなく局所麻酔(頭皮切開部に麻酔薬を注射し行う方法)で治療を行います。術時間は施設によって多少前後しますが、通常は脳深部刺激療法や集束超音波療法より短時間で終わります。
また、体内に器械の埋め込みを要さずに効果を得ることができ、体内に人工物が残らない点が脳深部刺激療法との最大の違いです。
高周波凝固手術(RF)の主な適応疾患
本態性振戦への有効性
振戦に対する定位的凝固治療は1950年代から有効性が報告されており、本邦でも長く行われている治療法です。脳の中の視床と呼ばれる部位が振戦症状に関与していることが分かっており、この部位を凝固する(熱を加える)ことで振戦症状の改善が得られます。
現在、振戦に対する治療として凝固術、脳深部刺激治療、集束超音波療法※1が保険診療として承認されています。
※1 2020年10月時点で、集束超音波療法の適応として保険収載されているのは本態性振戦とパーキンソン病による振戦です。
ジストニアへの有効性
体内に器械の埋め込みを要さずに効果を得ることができます。
適応となる疾患は脳深部刺激療法と同一ですが、手や足などの身体の片側に限局しているジストニアに対して、最もよい適応があります。
高周波凝固手術(RF)が適応となる患者さん
凝固術は以下のような患者さんにおいて、第一選択として推奨される治療法です。
- 体内への人工物(脳深部刺激装置)の留置を希望しない、またはできない患者さん
- 頭蓋骨密度比が低い(骨密度のばらつきが大きい)、頭髪の全剃毛を希望されないなどの理由で集束超音波療法の適応でない患者さん
ただし、振戦も患者さんの様々な症状特性、病態背景により推奨される治療法が異なりますので、定位的機能外科治療を専門とする医師の診察を受けて治療法をよく相談することも大切です。
高周波凝固手術(RF)の効果・期待できること
凝固した直後から振戦の減少を実感していただくことができます。
書字やコップの保持など特定の動作で振戦が目立つ患者さんには手術中にそうした動作もしていただき症状が軽減していることを確認します。
高周波凝固手術(RF)手術の流れ
ここでは手術前後の流れをご説明いたします。
1.入院・検査
手術前に必要な、さまざまな検査を行います。
入院・検査お薬の飲み方について、医師から特別な指示が出る場合があります。
2.手術
大きく3つのステップに分けられます。
①フレーム装着
②穿頭・凝固
③縫合
①フレーム装着
脳深部刺激療法や集束超音波療法と同様に手術当日に頭部へ定位的脳手術用フレームを装着し手術室に入っていただきます。
頭髪は剃毛しないか、または手術部位周囲を数cmのみ剃毛します。
②穿頭・凝固
ベッドに横になった状態で、前額部より数cm上の位置で皮膚を3cmほど切開し、その直下に約1cm径の穿頭(頭蓋骨に小さい穴を穿つ)を行います。その穴から熱凝固針を脳の中の視床と呼ばれる部位まで進めて、症状の改善度合いや副作用がないことを確認しながら数十秒間、凝固を行います。
②縫合
凝固が終了したら熱凝固針を抜いて皮膚を縫合し手術が終わります。
3.入院(手術後1週間)
通常、手術後は1週間入院する必要があります。
外来通院での抜糸を希望される場合は、さらに短期間の入院で治療可能です。
4.手術を受けた後の通院
退院してしばらくした後に手術創の確認や脳画像検査などのために外来受診していただきますが、脳深部刺激療法と違い刺激パルス発生装置の調整が必要ありませんので、継続的な定期通院は不要です。
振戦症状に対して内服していたお薬は、担当医と相談した上で減薬または終薬できます。
高周波凝固手術(RF)のリスク・副作用
振戦症状が十分に消失するまで凝固を行いますが、凝固が広範囲になると脱力などの運動麻痺、構音障害、しびれ感などの知覚障害が出現し後遺する可能性があります。したがって、最大限の症状改善を目指しつつ副作用が出現しないように手術中は患者さんの様子を確認しながら治療を行います。脳の治療ですので退院時の患者さんの状態、自宅での生活スタイルに応じた注意点など説明を受けてください。
高周波凝固手術(RF)のよくある質問
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