理事長挨拶

ご挨拶

一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会
理事長 貴島 晴彦
一般社団法人 日本定位・機能神経外科学会
理事長 貴島 晴彦

2024年1月より伝統ある日本定位・機能神経外科学会の理事長を拝命いたしました。本学会の発展に尽力したいと考えております。皆様のご協力を何卒よろしくお願いいたします。

前理事長の挨拶にもありますように、機能神経外科には多くの歴史があります。私の所属しております大阪大学医学部でも戦前より機能神経外科が行われておりました。1920年代にはドイツから来日したヘルテル部長は顔面痛に対する三叉神経節アルコール注入療法を日本に持ち込み多くの患者さんを治療しました。

また、1960年代の陣内教授によるてんかんや不随意運動症を対象としたForel-H-tomyはよく知られています。日本では他の大学でも定位・機能神経外科から脳神経外科が始まったという話をしばしばお聞きします。その後、機能神経外科には若干の停滞期もありましたが、それを経て、特に21世紀を間近にした頃からの工学、医学の大きな技術革新を背景に定位・機能神経外科はめざましく発展しております。この頃がまさに定位・機能神経外科の近代化の訪れと考えています。さらに21世紀に入ってからも数多くの研究開発(Research and Development; R& D)が進み、技術革新が起こり、それらが臨床現場に提供され、そして患者さんの治療に大きく寄与しています。そのような流れもあり、最近の北米では機能神経外科を志す若い世代の脳神経外科医が増加しているとのことです。

一方、医学でアカデミックな組織である定位・機能神経外科がサステナブルであるためには、R & Dが必須であります。つまり、教育を中心としてその周りを基礎研究、臨床研究、臨床成果の3つの要素が絶えず巡っているエコシステムが重要であると考えています。このどの要素からでも新規の人材が参入可能であり、研究に興味のある人材、臨床に興味のある人材など多様な人材が集うことがむしろ重要であると考えています。そしてその折々で人材の育成が可能であると考えています。すでにこの分野に携わっている我々が絶えずこの要素に目を向けていることが必要であると考えています。このエコシステムがどこかで滞ると、アカデミックな組織は停滞し弱体化し、そして埋もれていくことでしょう。定位・機能神経外科ではこのエコシステムを回転させる必要性がより強いと考えています。これまでの歴史からも、R & Dによるイノベーションが臨床現場の結果に大きく貢献してきました。そして、継続的に新たな人材が本学会の仲間になっています。また医師以外の人々も重要な役割を果たしています。臨床では多くのパラメディカルのスタッフ、研究でも医学系以外の数理工学系の研究者、そして産業界の方々、それ以外の人たちと、数多くの職種の人々がこの分野の発展に寄与しています。

今後もこの多くの人材とともにアカデミックであり続け、サステナブルなシステムが有機的に骨太に機能し、若い人材がより多く参入し、そして強靭な日本定位・機能外科学会が発展するよう尽力したいと思っております。また、それには皆様の日々の努力と進歩が欠かせません。さらに、学会の発展にもご協力いただけますよう、よろしくお願いいたします。

そして、その成果をより多くの患者さんに提供できればと考えています。

2024年5月吉日